消費者契約法における消費者への取消権の追加につき、当団体は、消費者救済・保護の観点からこの主旨に賛同いたします。
しかしながら、取消権の行使は消費者が被害に遭った後の「手当て」にすぎません。望ましい消費社会のあり方としては、そもそも消費者が被害に遭わない対策が十分に用意されていることが求められます。そのためには、まず、消費者に対する教育・啓発などの施策を進めることで、そもそも被害の発生を未然に防いでいくことが必要です。
サービスの複雑化、消費者の多様化、情報化等、消費者をとりまく環境がめまぐるしく変わり、消費者被害の態様も多様化していくことが予想されます。これからの消費者は、自らの判断により不要な契約や商品の購入を断ることができるようにならなければなりません。
だからこそ、消費者契約法における取消権という消費者救済策も必要ですが、たとえ被害に遭っても取り消せばいいと消費者が安易に契約することを推奨する結果にならないよう、取消権が付与される範囲については明確に限定するとともに、消費者がそもそもNOと言えるようになる消費者教育の充実という観点に立つ法整備と施策も併せて推進して頂きたいと思います。
また、本当に消費者の救済を図る観点に立つのであれば、事業者の悪質な行為を規制しなければ実効性が薄いと指摘せざるをえません。消費者被害に遭い取消権を行使しようとしても事業者に連絡がとれずに結果として救済されない場合や、仮に取消権を行使したとしても、返金手続きが進まず、あるいは既に会社の資産を別会社に移されたり隠匿されたりすることで返金が行われない場合など、取消権の効果が絵に描いた餅で終わることが多々あります。そのため、事後的に消費者を救済する施策を講じるのでは足らず、同時に、事業者の行為を対象とする特商法にて、そもそも不適正な勧誘や取引が行われないように取引の適正化を図っていく必要もあると考えます。
以上