飛行機のチケットやホテルなどがパッケージされた海外ツアー、ご利用になったことがある方も多いのではないでしょうか。こうした企画型海外ツアーは、インターネットで検索すれば、様々な会社の多数のプランが表示され、金額や宿泊するホテル、オプションなどの内容を幅広く比較することができるため、とても便利ですし、自分でホテル等の手続きをするよりも安全だというイメージも浸透しているのではないでしょうか。
しかし、先日、ツアーを企画するある旅行会社が倒産し、支払った代金が返ってこない、ホテル代などを二重に支払うことになったといった消費者被害が続出し、大きな波紋が広がっています。このように、企業の倒産などが理由で契約が履行されなかった場合、消費者の救済制度はどうなっているのでしょうか。
旅行業者や旅行業代理業者と取引をした消費者の保護を図る制度としては、営業保証金制度と弁済業務保証金制度があります。いずれも、旅行会社に一定額を供託することで、取引した旅行会社の債務不履行の際に、それぞれ定められた範囲内で弁済を受けることを可能とする制度です。
まず、営業保証金制度は、旅行業法によって定められた一定の金額を営業保証金として法務局に供託するものです。他方、弁済業務保証金制度は、旅行業協会の正会員が、営業保証金の5分の1にあたる額を弁済業務保証金分担金として納付し、旅行業協会がこの分担金を供託することにより、本来の営業保証金の額が保証されるというものです。
この制度のほかにも、海外の募集型企画旅行を企画・実施する旅行会社は、「ボンド保証制度」に加入することができます。ボンド加入会員社が倒産した場合、保証金の法定弁済額に加え、「ボンド保証金」の範囲内で弁済を受けられます。
今回の旅行会社の倒産では、当該旅行会社が一般社団法人日本旅行業協会の正会員のため、被害者に対しては弁済業務保証金制度による弁済がなされます。具体的には、1億2千万円の弁済限度額を、利用者からの認証申出額の割合に応じて比例按分し還付することになります。商工リサーチによれば、この会社の負債総額は151億円、一般旅行者の債権者数が3万6046件、1件で複数名の申込みをしているケースがあるため、申込客数は8~9万人のぼり、利用者に返金される額は1%程度だろうといわれています。
このように、旅行会社の倒産は、甚大な消費者被害となる可能性が高く、旅行会社が提供する情報だけで、消費者が経営リスクを的確に見極めることは困難であり、パッケージツアー自体を利用する消費者の減少にも繋がりかねません。
現行の消費者保護制度を見直すことも重要ですが、価格や宿泊先などのプラン内容だけでなく、経営状況の健全性を含め、消費者に的確に比較選択できる情報を提供する仕組みが必要です。第三者による評価やチェック機能を制度化するなど、旅行業界による自主的な取り組みが期待されます。
そして、改めて言うまでもありませんが、利用する消費者には、購入する商品やサービスの価格が安価で提供されている場合、なんらかのリスクがあることを前提として、慎重に選択していくことが求められます。