Amazonや楽天Books等で本を購入する機会が増えたため、私自身、なかなか本屋に足を運ぶ機会がなくなってしまっていますが、その生活様式の変更を迫られるニュースが先日流れました。
“紀伊国屋書店は21日、インターネット書店への対抗策を発表した。9月刊行予定の人気作家、村上春樹氏の著書の初版10万冊の9割を出版社から直接買い取り、自社店舗のほか他社の書店に限定して供給する。アマゾン・ドット・コムなどネット書店の販売量は5千冊にとどまる。紀伊国屋書店は売れ残りリスクを抱えるが店頭への集客につながると判断した。”
初版の9割を紀伊国屋が買い占めてしまうと、事実上ネット上で買えないことになります。村上春樹氏の作品なら顧客を呼び込む力は絶大ですから、村上氏の新刊を手にしたいという消費者は、当然ながら実際の店舗に足を運ぶことになるわけです。
もちろんコンビニやスーパーにおけるプライベートブランドと同じように、特定の店舗でしか購入できない商品を作って、店舗に足を運んでもらい、次いでに他の商品も購入してもらうという手法は、商売の王道の一つなのかもしれません。また、初版の大半をしっかりと購入してもらえるという意味で、出版社にとってもメリットかもしれません。
しかしながら、今回の紀伊国屋の取り組み、自らの書店のみの利益を上げるというよりは、ネット書店への対抗策という意図があるわけで、そこを顧客がどう判断するのかという点も同時に考えなければなりません。
特に、書店が開いている時間に外出できないビジネスマンや、子育てに忙しい母親、足の不自由な方々に加え、書籍を買い求めようにも近くに書店すらない地方在住の方等。今回の方策によって、事実上購入の機会を制限されてしまう方々も決して少なくありません。
最終的に判断するのは消費者ですので、ここでは、「書籍のネット販売そのものが良い、悪い」という論評は避け、「今回の新刊が発売される9月10日以降どのような消費者の判断がなされるか」を見守るとともに、今回の紀伊国屋の判断をきっかけとして、「実在の書店の存在意義とは」等の議論が今まで以上に深まることを期待しています。