みなさま、こんにちは。
最近、「脂肪の吸収を抑える」、「糖分の吸収を抑える」といった「ダイエット」や「健康促進」を連想させるような食品が増えているような気がしませんか。実は今年の4月から「機能性表示食品」制度なるものが施行されて、届出した商品であれば、健康増進に関連した内容を謳うことができるようになったのです。
機能性表示食品制度とは
機能性表示食品制度とは、消費者庁に事前に届出さえすれば、企業の責任において、科学的根拠を基に商品のパッケージ等に健康増進、維持に関した機能を表示することができるというもので、平成27年4月1日より施行されたものです。
もしかしたら以前からそんな制度があったと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、それはおそらく「特定保健用食品(トクホ)」制度。
「トクホ」もパッケージ等に健康増進、維持に関した機能を表示した食品です。ただし、この表示をするためには、事前に国の「認証」を得ることが必要で、この「認証」にあたっては臨床試験など時間、ならびに資金が必要となり、中小企業にとっては参入にあたって非常にハードルが高い制度となっていました。
そのハードルを一気に下げたのが、この「機能性表示食品」制度です。消費者庁への「届出」だけで「機能性表示食品」が名乗れることにより、企業への負担は非常に軽くなったといえるでしょう。
機能性表示食品制度の導入後、6月から機能性表示をした商品が販売開始され、現在では72種類にも上っています。なお、届出をしている「機能性表示食品」は消費者庁のページから確認可能です。
http://www.caa.go.jp/foods/index23.html#m04
機能性表示食品制度導入の背景
平成25年、安倍総理が「成長戦略第3弾スピーチ」(6月5日 内外情勢調査会)として以下のようなことを述べています。
“健康食品の機能性表示を、解禁いたします。国民が自らの健康を自ら守る。そのためには、適確な情報が提供されなければならない。当然のことです。
現在は、国から『トクホ』の認定を受けなければ、『強い骨をつくる』といった効果を商品に記載できません。お金も、時間も、かかります。とりわけ中小企業・小規模事業者には、チャンスが事実上閉ざされていると言ってもよいでしょう。
アメリカでは、国の認定を受けていないことをしっかりと明記すれば、商品に機能性表示を行うことができます。国へは事後に届出をするだけでよいのです。
今回の解禁は、単に、世界と制度をそろえるだけにとどまりません。農産物の海外展開も視野に、諸外国よりも消費者にわかりやすい機能表示を促すような仕組みも検討したいと思います。”
首相官邸:安倍総理 「成長戦略第3弾スピーチ」(内外情勢調査会)
規制改革を進め、民間事業者の自由な取り組みを進めるという観点からは非常に意義のある一歩だと評価しています。
「機能性表示食品」の課題とは
まず、最も大きな課題は、やはり機能性表示食品の認知度の低さです。
この点、株式会社シードプランニングの調査(機能性表示食品制度に関する意識調査)によれば、「機能性表示食品」の施行前認知度は46%となってはいます。
ただ、上のグラフでもわかるとおり、認知していると答えた方の多くは機能性食品という言葉を聞いたことはあるが、内容までは知らないと答えています。そうだとすると、実際には、「特定保健用食品(トクホ)」と混同している人や、そもそも健康食品の一類型だとしか考えていない人たちも相当数含まれているのではと思われます。それだけでなく、「聞いたことがああり内容も知っている」と回答している人であっても、それが「トクホ」とどう違うのか、しっかりと知っている人がどれだけいるのか、非常に心もとない状況だと言わざるを得ません。
だからこそ、改めて強調させて頂きます。
「機能性表示食品」と「トクホ」の最大の違いは、「トクホ」を名乗るには国(消費者庁)の審査を通らなければならないのに対して、「機能性表示食品」の場合は、国(消費者庁をはじめ、いかなる機関も)がその内容を審査していないということです。
もちろん「機能性表示食品」も、客観的な資料を添付しなければ申請できないことになっていますが、商品の安全性や機能性がどのように確保されているかは「消費者において判断すること」が大前提になっています。
スーパーなどで「機能性表示食品」を手に取るとき、消費者は情報にしっかりと目を通したうえで商品を選択することが重要です。また、日ごろから、消費者庁のサイトや消費者にかかわるニュースを調べるなどして、新しい制度を知っておくことも大切です。
今後、ますます「機能性表示食品」は増えていくだろうと予想されるなか、「機能性表示食品」とは何かということについて、消費者の理解を深めていくこと、そして、消費者が自ら考えて行動できるようにするため、商品を提供する企業にも情報提供を積極的に促しつつ、消費者に対する啓発活動を進めていくことが、今後の消費者行政としては不可欠であろうと考えています。